株式会社 アプレ コミュニケーションズ

NEXT Business & NEXT Persons
2021/08/26 更新

[第4回]強みと弱みがわかれば自分づくりができる~SWOT分析の勧め~

─「得意」を軸に仕事を考えることで新たな可能性が見える─

 前回、仕事の夢や目標も「C」からスタートすることが重要であると延べました。自分の夢や目標を達成するためには、その夢や目標を達成するために必要な知識やスキル等を明確にした上で、現時点での自分の知識・スキルを精査し、そのギャップを埋めるための方策を考え、実践していくことが重要です。
 しかし、ビジネスパーソンの中には、とりたてて夢や目標はないという人も存在します。また、夢はあっても漠然としているため、方向性を定めることができないという人も少なくありません。その結果、仕事をする上で必要な知識・スキル等を明確にできず、自分の「現在地」とのギャップも測定できない。抽出したギャップを克服・改善するための一歩を踏み出せないという悪循環が生まれやすくなっているのです。

 こうした状況を打開するためには、視点を変える必要があります。自分の夢や目標を軸にして将来の自分を描くのではなく、自分の「得意」を軸に将来を考えること。そうすることで新たなキャリアを想定することが可能になります。

─SWOT分析で、強み・弱み・機会・脅威を把握する─

 「SWOT分析」は、「得意・不得意」を軸に自分自身を検証し、方向性を見いだすための思考技術(フレームワーク)です。SWOT分析の「SWOT」は、下記の4つの単語の頭文字をとったものです。

 □ S:Strength(強み)
 □ W:Weakness(弱み)
 □ O:Opportunity (機会)
 □ T:Threat(脅威)

 SWOT分析は本来、多様な選択肢の中から解決策を選択する際の思考技術として活用されることが多いようです。たとえば、「新商品の売上増」という課題があった場合、新商品の強みや弱みどこにあるのか。また、市場を見渡したとき、「追い風になっているもの(機会)」は何か、逆に「逆風になっているものは(脅威)」は何かを分析(SWOT分析)。その上で「強み」と「機会」を活かす「積極策」を考えたり、「弱み」と「脅威」を踏まえた「防衛策・撤退策」を検討したりします。また、「強み」がありながら、状況が「逆風・脅威」だと感じられる場合であれば、他社との「差別化策」を講じ、「弱み」があっても、市場全体が「追い風・機会」に恵まれているのであれば、弱点を克服するための「改善策」を講じて市場に打って出ることを考えます(クロスSWOT分析)。

☆SWOT分析

出典:『仕事が早くなる! 読み書き&思考術』日本能率協会マネジメントセンター 編
https://pub.jmam.co.jp/book/b359420.html

☆クロスSWOT分析

出典:『仕事が早くなる! 読み書き&思考術』日本能率協会マネジメントセンター 編
https://pub.jmam.co.jp/book/b359420.html

─SWOT分析で、これからの自分づくりを考える─

 将来のキャリアを考える際にSWOT分析をする際には、2通りの方法が考えられます。

〔自分が達成したい夢・目標が明確な人〕
 自分の夢・目標が明確で、その仕事に必要な知識やスキル等がはっきりしていれば、前項で例に上げた「新商品の売上増」という課題を、「○○○○○で活躍するビジネスパーソンになる」等に置き換えればOKです。志望する業界・職種・企業を想定しながら、自分の「強み」「弱み」を抽出。その上で、志望する業界・職種・企業で活躍する上で、追い風(機会)になっている状況はあるか、「逆風(脅威)」だと思われる状況があるかを調べます。そして、前述した4つの対策(「積極策」「差別化策」「改善策」「防衛・撤退策」)を検討し、これからのキャリアプランを考えていけばいいのです。

〔具体的な夢・目標が明確でない人〕
 自分が達成したい夢・目標が不明確な場合は、何に対しての「強み」「弱み」を持っているか判断できません。ましてや、「機会」「脅威」といった外部要因を分析するには、あまりにも漠然としすぎているといえるでしょう。
 そこで、こうしたケースでSWOT分析を活用するには、自分自身のこれまで身につけてきた知識やスキル、経験等を「棚卸し」する形で実施していくことが重要になります。特定業界・職種・企業を想定する前段階としてSWOT分析を活用するのです。
 具体的には、つぎのような手順でSWOT分析を行います。

〔STEP1〕
自分が得意・他者より勝っている知識、スキル、経験、行動特性を「強み」の欄に書き出す。
自分では認識していなくても、他者から評価されたり、褒められたりした事柄も「強み」として考える。
〔STEP2〕
自分が苦手・他者より劣っている知識、スキル、経験、行動特性を「弱み」の欄に書き出す。
自分では認識していなくても、他者から問題視されたり、批判されたりした事柄も「弱み」として考える。
〔STEP3〕
メディアや政府機関等から発行される白書等を閲覧し、今後の社会変動や経済予測、ビジネストレンド等を分析、今後解決が求められる課題や必要とされる仕事、将来性のある業種・職種等を抽出する。
〔STEP4〕
メディアや政府機関等から発行される白書等を閲覧し、今後の社会変動や経済予測、ビジネストレンド等を分析、今後不要となる仕事や、衰退する業種・職種等を抽出する。
〔STEP5〕
上記の分析を通して、自分が仕事にしたいと分野・フィールド、業種・職種等を検討、想定する。
〔STEP6〕
STEP5で想定した分野・フィールド、業種・職種等を課題として設定。あらためてSWOT分析を行う(自分が達成したい夢・目標が明確な人のSWOT分析に移行することになります)。

─自分だけでなく、周囲の視点を採り入れることが重要─

 SWOT分析は、自分一人で実施できる思考技術ですが、可能であれば、周囲の視点も採り入れてみましょう。なぜならば、自分だけでは独りよがりの視点で分析することになり、可能性を狭めてしまうからです。上司や同僚、友人、家族等の協力が得られるのであれば、自分が単独で作成したSWOT分析の表を見せ、記載した事項に過不足がないか、また偏りや認識不足がないかをチェックしてもらってください。そうした第三者の視点が入ることで、SWOT分析の精度が向上し、これからの自分のキャリアプランがより明確になります。
 ちなみに、他者の意見は「天の声」。自分の認識とは異なる指摘を受けたとしても、感情的な反応はNGです。厳しい指摘、一方的だと感じられるような指摘をもらったとしても、それは「一面の真実」であることには間違いありません。自分のこれまでの仕事ぶりや言動の中に、他者から指摘を受けるような事柄があったのだと考え、自分をみつめ直す貴重なアドバイスとして受け止めることが肝要です。自分には自分では気がつかないさまざまな顔があること。そのことに気づけるだけでも、他者の意見を求めることは有効です。